【ネタバレ注意】【追記あり】「響け!ユーフォニアム 第二楽章 前編」の感想など その2

8/26に刊行された小説版の新刊
響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編」
を読んで気付いた事などを書き綴った記事、
その2です。長くなったので分割したうちの後半です。

※9月20日に1項目追記しました。











もちろん、以下ネタバレ注意です!

































  • 楽器はがむしゃらに練習しても上手にならない

作中では奏とサファイア川島が言っていますが、武田先生よくぞ書いてくれたと思いました。
これは自分が現役の頃からずっと意識してる事であり、自分の中で音楽に対する考え方の一番基礎です。
具体的には、

・楽器は気合と根性だけでは上手くならないばかりかどんどん下手になる
・「正しい奏法」を意識せずにがむしゃらにやればやるほど変な癖が付いて逆効果
・変な癖が付くと良い音が出ないばかりか、疲労が溜まりやすく息の使い方も非効率になってますます変な癖が定着する悪循環。顎関節症にもつながりかねない。

というのは、管楽器奏者では定説というか、少なくとも自分と自分の回りの音楽仲間では統一見解になってます。
そして、基礎練でも曲練でも、常に色んな事を意識して練習しないと上達しません。
久美子は1年生指導係として経験者の一年生に技術指導していますが、その中で

「なぁなぁで吹くのではなく、練習メニュー一つひとつの目的をしっかりと考えましょう」

と一年生に言っています。
滝先生も基礎合奏中に
「基礎練習は、ただ漫然と吹いているだけでは身に付きません」
「ハーモニー練習も同じです。いま自分がなんの役割を担っているのか、それを意識してください」(一部抜粋)
と指導しています。
たとえばロングトーン一つ取っても、「腹式呼吸で」「出す音をしっかりイメージして」「メトロノームにかっちり合わせて」「出だしをはっきり」「息の量・スピード・密度を一定に」「アンブシュア形成に必要な口の筋肉と、音を支える為の腹筋背筋以外の身体の力は抜く」「喉を空ける」「口の真ん中から息を出す」「音程・音色・音量を一定に」「拍の最後まで吹き切る」「音の処理を忘れない」など、パッと思いつくだけでも注意しなければいけない事がこれだけあります。ましてや合奏となれば、中学時代に滝先生と会話をした事を思い出すような余裕は一切ありません(笑)
もちろん、より良い演奏をするために反復練習は必要で、その為の根気・集中力・やる気は間違いなく必要ですが、根性論や精神論と取り違えてはいけない。
この「吹奏楽では根性論や精神論は通用しない」というのは自分の中で吹奏楽の好きな所でもあります。







  • 根音?主音じゃなくて?
と思って調べてみたら、どうやら高校時代に自分が「主音」だと思っていたものは、正式には「根音」と言うそうです。間違って覚えてた…。というか、うちの顧問の先生間違えて指導してた…。







  • 夏紀先輩のA編成入りは、非情な決断と捉える事もできる
A編成55人の楽器ごとの内訳が、ペット・ユーフォ・チューバ・弦バス以外が不明で、かつ課題曲も自由曲も架空の曲なので「そういう考え方もできる」程度の事ではあるんですが…。
正直、ユーフォ3本って、ちょっと多いですよね?「物語上、夏紀も久美子も奏もA編成に入れないといけなかった」と言われればそれまでなんですが、自分はちょっと深読みしてみました。
ユーフォのメンバー発表の直前、トロンボーンのメンバー発表で、秀一が無事にA編成入りしますが、その隣で三年生が泣きそうな顔になっていたという描写があります。話の流れ的に、この三年生はA編成から漏れたと考えるのが普通ですよね?一応、A編成に入れて嬉し泣きしてると曲解できなくもないですが。
ここで「今年は三年生でもA編成に入れない場合がある」というのを読者に印象付けてる訳です。アニメ版では、優子部長の代のトロンボーンは岩田さん1人ですが、小説版では描写が無いので複数人居るのかもしれません。
ユーフォとボーンは音域が近く、同じ動きをすることも多い。そんな中、ユーフォの3年生はA編成入りを果たし、ボーンの3年生はAから漏れる。で、ユーフォ3本体制。編成的な事を考えれば、曲にもよりますがユーフォ2本にしてボーン1本増やすのが自然な気が自分はします。夏紀先輩は非常に努力していましたが、技量では久美子と奏には及ばない記述が随所にあります。
ではなぜ、滝先生と松本先生はボーンに1本入れずにユーフォを3本にしたのか。これは滝先生の恩情だったのか。
もし、夏紀先輩とA編成から漏れたボーンの3年生が同じくらいの技量で、人数的にどっちか1本しか入れられないとしたら、と仮定します。
編成バランスの事を考えればボーンを入れるのが自然。当然、演奏力以外のものは考慮に入れない事は滝先生も重々心得ていて、部員もそれを受け入れて練習に励んでいる。ただ、部活運営の貢献度も高く、部員からの人望も非常に厚い副部長をA編成から外すとなると、部員のモチベーションはどうなるか。
音楽は、メンタル面の影響が如実に出ます。あすか先輩の退部騒動の時に、滝先生が「なんですか、これ」と言ってしまうほど腑抜けた演奏になった事がありましたね。
技量が同じくらい・同じ音域のユーフォとボーン・一方は部員からの信頼が絶大で部活運営上の貢献度も高い副部長で、一方は3年生とはいえ平部員。滝先生ならば、メンタルが演奏に与える影響を知らないはずはない。
そういう理由で、夏紀先輩がA編成入りを果たした横で、ボーンの3年生がA編成が漏れたとすれば、これは恩情というよりも「メンタル面まで込みで考えて、より良い演奏をする為に3年生の平部員を落として副部長の3年生を入れた」という見方もできます。副部長決定会議の際に、もし夏紀先輩が副部長指名されてなければ、夏紀先輩が副部長就任を断っていれば、そのA編成から漏れた3年生が副部長に就任していれば、結果が逆転して可能性もあると考えれば、とても非情な判断という見方もできる訳です。
考えすぎ?









この記事を上げた後に「序盤で『トロンボーンは2・3年生で3人』という記述がある」というご指摘を頂きました。さっそく確認すると、確かに久美子が言ってました。更に、「1巻に『初心者が一人いる』とも書いてある」とお教え下さいました。これも確認すると「7人中1人は初心者だからオーディションを受けるのは6人」と秀一が言ってます。
このトロンボーンの3年生が岩田さんなのかは分かりませんが(これもツイッターで「アニメに登場するモブ部員が、必ずしも小説版に居るとは限らない」というフォロワーさんのツイートを拝見して、なるほどなと思った次第)、少なくとも3年生は1人である事が確定します。
先述の通り、Aに選ばれて嬉し泣きしてる可能性もゼロではないですが、恐らくAから落ちたんだろうと推察されますよね?
つまり、パート内でたった1人(しかも恐らくはパートリーダー)の3年生がAから落ちた訳です。そのうえ、3年生は18人と1・2年生に比べると少なく、「2・3人中心にA編成が決まった」という記述もあるので、3年生で落ちた人はほとんど居ないと予想されますよね。下手したら3年生で落ちたのはこの部員だけかもしれない。
この事に気付いた瞬間、急にこの3年生部員のメンタルとトロンボーンパートの空気が心配でしょうがなくなってしまいました。自分の脳みその単純さにビックリです。
まずこの3年生部員(敢えて岩田さんとは断定しません)、のメンタルを考えると居た溜まれません。恐らくは練習も真面目にやったんでしょう。秀一から愚痴もこぼれてないので、パートリーダーとしてもちゃんとやってたんじゃないかと予想されます。小説版では晴香部長の代でAに入れなかった3年生が居るのか分からないですが、この3年生の気持ちを考えると、部活に残るのも地獄、辞めるのも地獄だよなと。そして、パートの後輩にもどう接すればいいのか。自分も中3の時に、野球部最後の大会で背番号を貰えなかった経験があるので、気持ちが痛いほど分かります。滝先生・松本先生・優子部長・夏紀先輩のアフターフォローがめちゃくちゃ重要、かつ非常に難しいと思います。
トロンボーンパート内の人間関係も心配です。1・2年生は、この3年生とどう接すればいいのか。どうしても腫れ物に触るようになってしまいますよね。トロンボーンパートの空気が地獄の様相なのは想像に難くない。前年にソロ争いで大変な事になったトランペットパートに匹敵、あるいはそれ以上かもしれない。一応学年代表である秀一は、こういう時どういう立ち回りをするんでしょうか。秀一は優しいけど、こういう事態の処理は苦手そうだなぁ。
強豪校がゆえに起こりうるこの事態ですが(北宇治が強豪校になったが故に起こった事態でもある)、後編ではこの辺の顛末は触れられるんでしょうか。多分触れられないんだろうなぁ…。








  • オーディションで滝先生が奏に言った言葉が実に滝先生っぽい
今作では全体的に影の薄い滝先生ですが、最終盤で奏に
「私は次のオーディションでの演奏をあなたの実力と判断するつもりです。どうするのか、慎重に考えて下さい」
と言います。実に滝先生っぽい。







  • さつきの底抜けの明るさは、家庭環境の裏返し?
キャラクター紹介には
「好きなもの:お母さんが作るカレーライス」
「嫌いなもの:ひとりで食べるカップラーメン」
とあります。もしかして、両親が共働き、もしくは片親で忙しくて、平日は家で一人でいる事が多い(兄弟姉妹が居るかどうかは現時点では不明)。その反動で明るく社交的な性格や、葉月や美玲に仲良ししたがる性格が形成されたんでしょうか。







  • 食べ物の描写がどれもこれも美味しそう過ぎて困る
武田先生は食レポも行けるんじゃないでしょうか。









  • 「源ちゃん先生」って多分、求のおじいさんだよね?
最初、お父さんかなと思ったんですが、
「嫌いなもの:祖父」
とあるので、おじいさんの線が濃厚?








  • 音楽には「馴れ合い」も時には大事だよって奏に伝えたい
奏は、サンフェス直前の待機中に、さつきと葉月がじゃれ合って、それを横で美玲が微笑むという光景を見て
「・・・久美子先輩も、ああいうのがいいと思います?」
「ああいうのって?」
「ああいう馴れ合いですよ」
「馴れ合いって・・・そういう言い方はやめたほうがいいんじゃない?」
「そうですか。先輩が言うならば控えます」
と言って強烈に毒づきます。もちろん、彼女なりの音楽に対する考えがあるのでしょうし、それを否定する事はできません。
でも、オジサンは思います。吹奏楽は一人では音楽が完成しない。指揮者含め、各楽器の各パートが役割を果たしてこそ良い演奏になる。しかも、さっき言った通り、楽器の演奏はメンタルがモロに影響します。人間関係がギクシャクすれば、音もギクシャクすると思うのです。だから、それこそ「大好きだよゲーム」くらいの、思い切り馴れ合うのも、良い音楽を作る為の一つの手段なんじゃないかと思う訳です。(余談ですが、「大好きだよゲーム」みたいなキャッキャウフフは、吹奏楽部時代に良く目撃してたので、今の吹奏楽部でもこういうノリがあるのかなと思ってほっこりしました。)
これは、小説1巻・アニメ1期の麗奈に対しても思ってました。
「おめさん1人で音楽やってんらかね(あなたは1人で音楽をやってるのかい)」
みたいに。
麗奈はその後、低音3人や香織先輩・優子先輩と触れ合っていくうちに、少しずつではありますが「音楽を通じて自分のなろうとする『特別』は、自分一人の力だけでは完成しない」という事に気付いていきます。本当にほんの少しずつですがww
美玲は、序盤からこの辺を充分理解していました。理解しているのに自分がそういう考えに至れないジレンマに苛まれ、サンフェスの練習で爆発してしまう。逆に、元から充分理解してたからこそ、久美子の手助けによって踏み越える事が出来た訳です。
一方の奏は、元からそんな考えは持っていません。だから、美玲が変わった瞬間に立ち会っても「何も間違ってない美玲がなんで変わらなきゃいけなかったんだ」と怒りをぶちまけます。そして、サンフェス本番で上のようなセリフを吐く訳です。そして中学時代の経験と照らし合わせて「自分だって頑張っているのに、周りは認めてくれない。人望ある3年生からA編成の枠を奪ったら、自分が敵役になって疎まれるに決まってる」と思い込んでどんどん追い込まれていきます。直接結び付かないので屁理屈みたいになってしまいますが、「馴れ合う事も、より良い音楽を作る一つの方法だ」という考えを持っていれば、オーディションで自分を守るためにワザとミスをするという事態になる前に追い込まれた状況から脱出できたんじゃないかと思えてなりません。
オーディションから無理矢理引っ張り出されて久美子や夏紀先輩と対峙した事で、奏が「一人で吹奏楽はやれない」という事を理解するきっかけになったらいいなと思いますが、後編ではどうなるでしょうか。







  • 吹奏楽部で起こる数々のトラブルは、そもそも音楽は競技じゃないのにコンクールがあるのが原因である事が多い
これについては、後編が刊行されてから詳しく書こうと思います。
一応言っておきますが「だからコンクールなんか無くしてしまえ」という事ではないので悪しからず。
分からないですが、同じ芸術系で、かつコンクールがある部活(合唱・美術・書道など)でも、似たようなトラブルは起こるもんなんでしょうか。






  • 秀久美が甘酸っぱくて心に刺さる。くみれいはどうやって読んでも「距離が極端に近い友情」にしか読めない
これは色んな解釈がある事なので、これも一つの解釈だと思って読んで頂ければと思います。
秀一や久美子の会話の端々に、秀一と仲の良いちかおの名前が出てくる辺りがめちゃくちゃリアルですね。
久美子と麗奈は、小説もアニメも、何回読んでも見ても百合には見えないんですよねぇ。というか、武田先生がインタビューなどで「久美子と麗奈の関係は、女子特有の、友情関係での距離の近さを書いてみた」というニュアンスの事を答えてらっしゃって「やっぱそうだよなぁ」とずっと思ってました。
もっと言うと、作中でガチでそっちなのは、多分香織先輩だけだと思ってます。
のぞみぞれは、完全に片依存の関係ではあるものの、あれを恋愛と解釈するのは無理がある気がします。
なかよし川は恋愛関係と解釈する事も出来ない事も無いですが、やっぱり自分としては恋愛関係とはちょっと違うのかなぁと思います。トムとジェリーは恋愛関係じゃないですよね?それに近いなと思ったり。ただし、自分はそんななかよし川、大好物です!







  • みぞれ先輩は後編で今度こそ成長を遂げることができるだろうか
みぞれ先輩ファンの方は、ここは見ない方がいいかもしんないですww

定期演奏会で成長の鱗片を見せていたみぞれ先輩ですが、プロローグ・エピローグや、縣祭りのやりとりでは、事態は以前より深刻なんじゃないかと思ってしまう状態になっています。読んでて何度も
「みぞれ先輩マジか・・・、高校3年生でこれはヤバすぎるだろ・・・」
って思っちゃいました。
後編では間違いなく希美先輩とみぞれ先輩の関係が主題の1つになるでしょうから、どのような解決を見るのか、はたまた、武田先生の「後味悪い系作家」の本領発揮で、何も解決せずに終わるのか。楽しみにしておこうと思います。
因みになんですが、原作2巻・アニメ2期前半の希美先輩とみぞれ先輩のゴタゴタ。自分の周りでは、女性はみぞれ先輩にイライラしてて、男性は希美先輩にムカついてた傾向があったんですが、実際はどうなんでしょうかね。









後編は10/3発売予定だそうです。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refBook=978-4-8002-7491-5&Sza_id=MM

果たして北宇治は府大会を突破できるのか、関西大会を突破できるのか、全国で金を取れるのか。武田先生の事なので、「誰かがミスして上位大会進出を逃す」とか、1・2年生部員の誰かが秀大付属のあかりちゃんのような立場に追い込まれるという展開も充分考えられるので油断禁物です。
武田先生はどのようにして我々の精神に棘をぶっ刺してくるのか。今から楽しみですね!
後編が刊行されたら、そっちのレビューも書こうと思います。それでは~。